新宮正春著の、「異聞・武蔵剣刃録」を読みました。なるほど、これは確かに’異聞’と云える宮本武蔵です。
作者の武蔵への視線が非常に冷たいのです。例えば、佐々木小次郎との係わりですが、まず19歳の武蔵が39歳の小次郎と戦って、睾丸1つと男根を切り飛ばされて負けます。
その10年後に巌流島の決闘があり、武蔵は小次郎を破ります。つまり巌流島の決闘は武蔵の遺恨試合というわけです。
武蔵は不能者として生き、子供が作れないために養子を取ります。
また、老境(60歳前後)の武蔵は普通悟りを開いた境地に達している様に描かれますが、この作品の武蔵は義理も人情もなく、あまつさえ気に食わない相手にはイジワルまでします。
腕っぷしと眼力はずば抜けていますが、精神的には俗物な武蔵として描かれています。
武蔵ファンの私としてはどうにも気に食わない部分が多くある内容でしたが、こういうのもアリですよね。武蔵に好意的な作品ばかりでは、多分真の武蔵像は見えてこないでしょうから…
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